【舞台】イマカラメガネ『女の雨情』は日本版セックス・アンド・ザ・シティだ

 観てきたぜ。一年に一度のフェステバル『イマカラメガネ』By OFF・OFFシアター

2003年に第1回目がはじまってからもう9回目の公演ですか。

第1回公演『大人の夏休み』から出演していた僕も、回を追うごとに洗練されるダンスシーンに苦戦。周りの出演者においてゆかれ、遅れを取り戻そうと深夜の公園で自動販売機の明かりを頼りに自主練習をしたこともありました。 それでも周りとのダンスレベルの違いは深くなり、持ち前の卓越した演技力をもってしてもその差を埋めることは困難になったと確信した第4回『三人兄妹』で涙の引退。

それから5回目の公演になるのですね。

当日、受付に行くと主催の松田文さんが笑顔でお出迎え。 僕はとっさに、イマカラメガネを去ることを告げたあの日のことが頭に浮かびました。 目に涙をうかべ、引き止めたい感情を押し殺し笑顔で送り出したあの笑顔。忘れていないですよ。

松田さんに促され、席に座った僕は、まずミラーボールを探しました。 それこそが、イマカラメガネの楽しみ方その1です。

 

  • イマカラメガネの楽しみ方その1. ミラーボール

イマカラメガネにとって切っても切れないアイテムです。 時に切なく、時に甘く、感情的に放たれる光のプリズムはミラーボールの無限の可能性を発見することでしょう。

開演まで10分を切った頃になるとイマカラメガネの楽しみ方その2が待っています。

  • イマカラメガネの楽しみ方その2. 松田さんによる前説

言っている内容は「携帯の電源を切ってください」や、「途中休憩はないのでお手洗いは済ませておいてください」といったごく普通の内容です。 しかし注目すべきは内容ではありません。そのたどたどしさです。 前説といっても見に行く劇団によっては超人的に流暢な前説をやる人もいます。 しかし松田さんの前説に流暢さはありません。あるのは最後までちゃんと言えるのかと不安になってしまう危なっかしさです。

断言しましょう。すでにイマカラメガネは始まっているのです。 この普通ぽさ、きっと始まる前に何度も前説の練習したんだろうと思ってしまうほほえましさこそが、この後に繰り広げられるイマカラメガネワールドへの入口なのです。

実は松田さんは第3回公演まで役者として出演もしていました。その後は演出に専念するため役者としての出演はありません。しかし役者としての情熱は決して消えていないのです。本編への出演はありませんが、そのかわりに前説を一人舞台のステージに選んだ松田さんの生き様は必見です。

さて、今回の『女の雨情』ですが、見終わった後帰りの電車の中で頭を整理するのに時間がかかりました。 これまで第8回までのイマカラメガネとはちょっと違うのです。特に最近は女性が考える女性の幸福と男が思い描いてしまう女性の幸福とのギャップがありすぎて、男にとっては居心地の悪い部分が多かったのですが、今回はそれがあまり無かったのです。 なんていうか、女性の暗部を見せられた感じ。

内容は、かつては仲のよかった三人の女同士だが、惚れたハレた奪ったで仲が悪くなり、その上仕事もからんで事態は複雑になっちゃうしという、セックス・アンド・ザ・シティ状態。 違うのはセックス・アンド・ザ・シティほどセクシーなシーンはないのと、ニューヨークと下北沢という場所だけ。 でもどちらがリアルかと言ったら圧倒的に『女の雨情』でしょう。 出演者の山口さん演じる川合田の腕なんか昨年末に生まれたウチの子の腕にそっくりでしたし。

そしてなんといっても圧巻なのはケンカのシーンですね。 登場人物みんな一度はキレてました。 特に男と女のケンカシーンはまるで我が家の夫婦喧嘩を見せられているようで、脇の下ぐちょぐちょ最高潮。

 

  • イマカラメガネの楽しみ方その3. ケンカシーンがリアル

エチュードをベースに芝居を作るイマカラメガネの真骨頂が見られるのは実はケンカのシーン。気持ちから作るため、稽古場では本当の修羅場になるほどです。 リアルでないわけはありません。

ただひとつ気になったのはここに登場する男の扱いです。 男が原因でケンカしちゃったり、気まずくなったり、仕事に支障が出ちゃったりするのです。 最後は男のことは関係なく開き直っちゃうのは男にとってはちょっとさびしかったりしました。

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