『君と歩く世界』

シャチの調教師として働くステファニーは水中ショーの最中の事故で両足を失ってしまう。 絶望で心を閉ざしたステファニーが連絡を取ったのはナイトクラブで自分を救ってくれた男アリだった。 このアリという男。 頭の中にあるのはセックスと格闘技というなかなかの野生児。 しかし足がないというだけで憐みの視線を浴びなければならない絶望の中にあるステファニーにとって野生児アリはシンプルイズベストでいい男。 ステファニーは次第にアリに惹かれていく。 アリはアリでステファニーの気持ちに気づきながら、ステファニーの目の前で悪びれもせず他の女性とどこかに行ってしまうような本能むき出しの男。 気持ちがいい男といえば気持ちがいいがそんなアリにも試練が訪れる。 最愛の息子を助けるために格闘技で鳴らした拳がうなる。 格闘技をやっている時よりも強く、激しく、両方の拳が壊れるほど。 格闘技をやっている時でさえここまではしない。 倒すためではなく助けるため。 人は自分や愛する人の死の間際に直面した時に自分のそれまでの人生の意味を理解する。 決してハッピーエンドではないが、アリの穏やかになった表情と、アリを見つめるステファニーの表情に二人だけのハッピーが終着する。 いい。