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『ハミングバード』

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  ジェイソン・ステイサム演じる特殊部隊の兵士ジョゼフ・スミスはアフガニスタンの戦場で5人の仲間たちを目の前で殺された報復で無関係の民間人を5人独断で殺害するという軍法違反を犯す。 この様子を監視していたのが無人偵察機「ハミングバード」。 ジョゼフ・スミスは民間人を殺害した容疑で軍法会議にかけられたものの逃走。 ロンドンの下町でホームレスとして身を潜めていた。 ジェイソン・ステイサムの映画は何も考えずに見ることのできる作品が多いが、『ハミングバード』のジェイソン・ステイサムは戦場のPTSDを患っていることから映画のトーンは全体的に暗め。 しかも映画出だしのジェイソン・ステイサムはギャングからボコボコにされるほど衰弱している。 逃げ込んだ家がたまたまお金持ちでしかも長期出張中で暗証番号付きのキャッシュカードからお金をちょろまかしながら再起を図る。 なんて都合がいいと思うか、ジェイソン・ステイサムの作り方を観察できる絶好の機会と思うかは人それぞれだが、私は後者だ。 周りの目をごまかすためにお金持ちの住人ダイモンの”彼氏”を装うところも色々な意味で手段を選ばなくて素晴らしい。 この映画の最大の見どころはジェイソン・ステイサムを助けた修道女クリスティナ。 演じるアガタ・ブゼクはポーランドの女優。 修道女の清貧・貞潔・従順を見事に体現している。 誤って触れてしまっただけで神の裁きを受けそうな雰囲気を漂わせるクリスティナが真っ赤なドレスを着て現れるシーン。 自分の中の新たな性癖の扉が開く音がしました。 起きてはならない、触れてはならないタブーを目の前にしているような感覚は同じ修道女が出てくる映画『天使にラブソングを』では感じなかった感覚だ。 真っ赤なドレスを着たクリスティナと男性器丸出しの写真で埋め尽くされたパーティでデートをするジェイソン・ステイサムは罪が深くてうらやましい。 クリスティナも胸を締め付けられるような壮絶な過去があり、同じく過去から逃亡を続けるジェイソン・ステイサムとロンドンで人生が交差する。 ジェイソン・ステイサム出演作としては珍しいしっとりとした作品。

『アルティメット・ブロンド』

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 ブロンド。 やわらかい黄色、ずかに赤みを帯びた黄色などの意味を持ち金髪の女性自体を呼ぶこともあるこの言葉にわたしは弱い。 同じくブロンドに弱い冴えない法廷会計士がたまたま立ち寄ったコンビニで出会った戦闘能力の高いブロンド美女と旅をするという何ともうらやましい出来事を描いたのが『アルティメット・ブロンド』だ。 ナターシャという名のブロンド美女は犯罪組織から報酬をピンハネしたことがばれて追われるという追う側にとってもどうでもいいような相手。 そのため追手も片手間なのか、ポンと現れてポンとやられる。 たまらないのはナターシャと逃げることになった法廷会計士ジミー。 ジミーは亡くなった兄の遺灰をまきたいために海に向かっていただけなのに、ナターシャと出会ってしまったがために、時折やってくる追手とナターシャのバトルに付き合い怖い目に合う。 しかしこの映画、迫りくる追手から命からがら逃げるアクション映画のようで、実はロードムービーなのだ。 追手から逃げる車の中でジミーとナターシャがそれまでのお互いの人生を語るうちに愛情とも友情とも違う奇妙な感情が芽生え始める。 偶然出会い、旅をすることになった全く違う人生を歩んでいた二人だが、 人生の岐路に立っていたという点で二人は共通していたのだ。 ジミーとナターシャが上半身裸になって「もう振り回されない」と大声を張り上げる。 それを受け止める広大なアメリカの大地。 ちょっぴりエッチで大好きだ。

『サマーフィルムにのって』

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   これ、失恋だったのか 青春とSFは相性がいい。 特にタイムスリップ物ものとの相性の良さは格別だ。 時代劇オタクの女子高生ハダシは映画部に所属しているが、同部が制作するキラキラ恋愛映画には興味がない。 ハダシは映画館で時代劇を見に行くとひとりのイケメン男子を発見。 追いかける。 凛太郎という名のイケメン男子の持つりりしさにほれ込んだハダシは、凛太郎を主人公に時代劇映画を作り出す。 勝新太郎版座頭市をこよなく愛するハダシの殺陣が本格的。 演じる元乃木坂46の伊藤万理華の丸顔も相まって一瞬、勝新太郎に見えてくる。 観ているこちらも思わず中村珠緒の気分になる。 ハダシの映画作りに協力する親友のビート板やブルーハワイもいい。 二人とも女子なのにこんなニックネームを受け入れるところも青春だ。 急ごしらえの映画制作チームが映画作りを通してそれぞれの思いが交差していく。 情熱、憧れ、失恋。 喪失して初めて恋だったことに気づいたビート版の 「これ、失恋だったのか」のセリフにこちらの涙腺も刺激される。 映画作りを通してまとまっていく絆。 SFパートも派手さはないが、素晴らしい。 のちの映画の巨匠ハダシはなぜ最初の作品「武士の青春」だけがないのか。 それを確かめに来た未来人・凛太郎が生み出すタイムパラドックスはあまりにさりげなく見事。 劇中映画「武士の青春」と本作「サマーフィルムにのって」のエンディングを融合する本作のエンディングに驚愕する。