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上腕ですべてを解決する『犯罪都市』

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2004年に実際に起きた「Heuksapa」という事件をもとにしている映画。   中国の延辺から来たチャイニーズマフィアとソウル市九老区の加里峰洞を仕切る地元の暴力団の間で縄張り争いが勃発。   地元警察が平和を目指す。 マ・ドンソク演じるマ・ソクト のキャラクターが強烈。   暴力団かと思ったら警察のほうだった。 マ・ドンソクはアジアのアクションスターだと思っている。   ただし使うのはアクロバット的なアクションでも華麗なカンフーアクションでもない。   ちょっとした女性の胴回りくらいありそうな上腕から放たれる「鉄拳」だ。   チンピラくらいならパンチだけで息を引き取ってしまう。 『犯罪都市』は銃もカーアクションもなく、純粋にマ・ドンソクによる豪快な肉弾戦が堪能できる。   鉄パイプもナイフも斧も通じない。   圧倒的なわがままボディ。   極限まで肥大化した筋肉の鎧から放たれる攻撃はリアルヤジロベー。   黄色い服を着た部下に「タンポポか」としっかりジョークも忘れないところがにくい。   最後のチャイニーズマフィアのボス、チャン・チェンとの対決では手こずるのかと思いきや圧倒的な破壊力で圧倒する。   アジアが生んだ新時代のアクションスター、マ・ドンソクから目が離せない。 

夢見る少女から夢見る女性へ『マイ・ニューヨーク・ダイアリー』

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 1995年。   作家になることを夢見て西海岸からNYに移り住み、老舗の出版エージェンシーで働き始めることになった若い女性ジョアンナ。 ジョアンナはJ・D・サリンジャーの代理人を務めることになった。   代理人といってもすでに隠匿生活を送っているサリンジャー宛てのファンレターに「サリンジャーはファンレターを読みませんので悪しからず」とだけ返信する仕事。   J・D・サリンジャーの著作を一冊も読んだ琴のないジョアンナは特に感慨も抱かずに淡々と仕事をするが何人かの熱心なファンにはサリンジャーになりすまし丁寧な返信をし始める。   ジョアンナを演じるマーガレット・クアリーが作家を夢見る文学少女を好演。   不器用で、でもまっすぐ。   同じく作家を目指すボンクラ書店員と恋に落ち、これは愛ではないことに目が覚める。   1995年の設定も小気味好く、まだインターネットやスマホが十分ではない自由さにうっとりする。 無機質なニューヨークのビル群を背景に人間がお互いの目を見あって会話をし、思いをぶつけあう。   たったこれだけのことが画になる。スマホの小さい画面には収まりきらないニューヨークの街並みにあこがれる。   出版社の所狭しと並べられた書物に囲まれ人の言葉、書物の言葉に触発され成長をするジョアンナにくぎ付けだ。   もう自分には西海岸から作家を目指す少女といえばマーガレット・クアリーしか思い浮かばない。

それでも言葉は残る『愛する人に伝える言葉』

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  末期のすい臓がんと診断され、残りわずかな時間を人生の整理と病に向き合うことに懸命に励んだ演劇教師バンジャマン。 バンジャマンを支える母親、医師たち、演劇学校の生徒たち。 彼のためにとする行動がはたして彼の望んでいることなのか。 旅立つ患者に向けた5つのフレーズ。   赦して、僕は赦す、ありがとう、愛してる、さようなら。 悩み苦しむのは患者本人だけではなく、医師たちも最良を求めて苦悩する。 誰しも必ず訪れる最後の瞬間を迎える瞬間は、静かで、深い。