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狂気の老人『43年後のアイ・ラヴ・ユー』

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 老人が好き勝手する映画が好きだ。   豊富な経験からくる安心感と、行動力に足元が付いていかない肉体の衰えからくるハラハラ感が見ているこちらをわくわくさせる。 この作品もそんな映画。 気ままな老後生活を送っていた演劇評論家のクロフォードが、かつて若かりし頃に恋に落ちた往年の人気舞台女優リリィがアルツハイマー病となって老人養護施設に収容されていることを知る。   彼女に会いたいと願ったクロフォードは自身もアルツハイマー病だと偽りリリィと同じ施設に入居。   リリィとの接触を図る。 クロフォードもリリィも家族がいる。   下手をしたら双方の家族を壊しかねない許されない行為。 それを重々承知の上での大胆な行動。   こんなことが許されるのは老人しかいない。   10年や20年のぶり返した恋ではない。   43年だ。   もはや温かい目で見守ることしか家族にはできない。   43年後のアイ・ラヴ・ユーは伊達じゃないのだ。 彼女に会うためにアルツハイマー病を偽るという圧倒的覚悟。   失うものは何もない、そう決心した老人ほど怖いものはないだろう。   アルツハイマー病を偽っているのか本当にアルツハイマー病になってしまったのか観ているこちらも混乱する。   2つの意味での狂気の演技。   もしも自分がクロフォードの家族だったらと思うと、わくわくしておかないとやってられない。